箱根ポーラ美術館
見てきました。
2003.4.28 photo by mirutake
箱根登山鉄道を昇ってくると山の行楽にきた気になって、一つ手前の強羅フランス庭園でも見ようかと言う気分になってしまった。
ガラスの表現の進化の段階=開口部の透明ガラスが床までの大ガラスになり、1階だけでなく、高層ビルのファサードの全階に使われるにまでになった。そして次には外部に面する開口部としてではなく、内部壁の仕上げとして=擦りガラスに照明を仕込んで光壁としたものが、ついにこんなにも大きなものとして作り上げられた。ガラスの使用方法が、不透明な擦りガラスによる内部壁面の軽快感を作ることに移ってきた。この広大な「透明で無い」擦りガラスの面が雄弁に語っている。まさにこの擦りガラスの後ろに「広大な暗い」美術展示室があるのだから、理念としてはちょっと張りぼてなんだけど、この魅力的な美しさには納得させられてしまう。
内部に4箇所樹木としての自然を見せるところがあるが、広大な擦りガラス面の存在が、「樹木自然」が隅っこの脇役になっている。トップライトが指し示す喫茶部の「樹木自然」への開口部も、同じように隅っこの脇役自然でしかないことになっている。箱根の森に埋まってしまって、たまたま広大な谷筋が上手く見えないロケーションなのかもしれないが。
この喫茶に入ってきたとき、樹木自然に向かって座るか、トップライトを眺めるべくエントランス側に向かって座るかちょっと迷ったが。驚いたことにトップライトの圧倒的な明るさの前に、樹木自然のほうが暗いのです。
喫茶コーナーからの箱根の森
ここは何とか箱根の森に飛び出してゆくような感じを作りたかったのではないか。開口部のすぐ側に迫る樹木が、まず飛び出そうとする意識をとめる。擦りガラス壁が外部に飛び出していたり、天井のプレキャストコンクリーがそのまま外部に飛び出しているのに、床の材料を内部と変えてしまったことや、すり鉢擁壁の手摺りの無骨さが、スット視線が樹木自然に抜けてゆかない。
少し解ってきたのですが、林の中に埋まってしまった建物の開口部は、樹木に囲まれていますから、やはりトップライトに比べると暗いのですね。特にここの圧倒的なトップライトの量と、それからの光を受ける擦りガラスの壁面が圧倒的に明るいという造り方になっているということですね。そして何よりもこの抽象的な面として作られているガラス面の淡い素材感が美しい。
この建築の主題が吹き抜け4層にわたる=圧倒的な擦りガラス壁の存在であることが良くわかった。
これにトップライトから直射光が当たるとき、トップライトのガラスリブの緑色の正射と白い反射が交差して連続に写りこむ。この時の静寂な美術館での圧倒的な高揚感。
反対に曇ってしまって直射光が入らないと、擦りガラスのスモークの柔らかい感じが壁面全体を占め、静寂でドンヨリした感じになる。
もう少し暗くなってくると、今度はガラス内部に仕込まれた照明の縦の筋が浮き上がって、ちょっとにぎやかな感じになる。これは均質な色温度ではなく、いくつかの色光の段階になっている。これも賑やかさを演出している。
それにしても確かにここは箱根の自然の真っ只中なのだが、内部に入ってしまうと広大な光る擦りガラス面と、トップライトに写す青空と雲と日の光と雨空という、都市にもある抽象的な自然を感じさせるていることがわかる。帰りにこの美術館を出ると圧倒的な樹木としての自然を目にする時、改めてそう感じるのだ。
ガラスの箱はその上部の透明ガラスによって、またサイドの透明ガラスに当たる雨が良く見えることによって、雨天鑑賞にとても良いのです。そしてこの美術館では斜めの透明ガラスのトップライトが、最上階ではすぐ近くに見えますので、雨の鑑賞にはもってこいですね。今回直射光の晴天からドンヨリの曇り空までの変化が見れましたが、残念ながら雨までは体験できませんでした。
030505
関連HP
箱根ポーラ美術館
日建設計
ポーラ美術館 開館記念講演会
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