谷口吉生 豊田市美術館 

だいぶ前ですが、行ってきました。



 97・6・7(土)愛知県豊田市豊田市美術館、見てまいりました。
この設計者については以前に葛西臨海公園展望広場について鑑賞記を書きまして、自分でも驚くような新観点を示せたと自画自賛しています。で谷口と言う人は建築界の通り一遍の解釈を越えた所にいる筈だと言うことで、もうひとたび新しい谷口解釈を示せるか?と言うことを目指して向かいました。午後3時頃現地に着きまして、内外一通り見まして、5時半の閉館時間頃食堂で妻と語らっていました。
こんなことを何故書くかと言いますと、食堂に座った時点では自分なりの新しい観点と言うのは言葉になっていませんでした。
ですから通り一遍の谷口解釈からはじめまして、自分なりの読みをどう見つけたらいいのか限界を感じたと言うことを話している所から、やっと体験したことの言葉への変換が始まったと言うことを報告したいと思います。
例えば内外床の材料の違いが、足で踏んだ感触の違い=バリエーションが意識的に使われていることとか、今まさに体験しており「変だなー」と思っていても、明快な言葉に置き換えられないと、そのまま見過ごして終わってしまうのだと痛感しました。
それから夜間照明が点いた7時半まで池縁の暖かい花崗岩に寝転んでノンビリと解釈したマトメです。







   1.足の感触、音、高さの低さ、これらがキーワード。体験でしか伝わらない建築の面白み。
 アプローチして行くと植栽と車道のアスファルトとの見切りの白御影石が、丘への車路の上昇感となって、入口車寄せ床の赤御影石の自然切石に導いてくれる。この自然石の凹凸(!)と重量感を足裏にヒタヒタト感じながら歩いて行くと、上部に高いが軽快なアルミハニカムキャノピーが迎えてくれる。すると足裏の感触が変わる。色も赤い自然石から磨いた黒に変わる。何でこんなに違っているのか、何をやろうとしているんだろう。床が平らになってしかも「ポタポタ」と音(!)がする天然スレートの深い黒色の床板も、建物の領域に入ったことを教えてくれるということか。建物領域内で外部の通路テラスもこの「ポタポタ」と音(!)のする深い緑色の天然スレート床になっている。この領域の意味のするものがあるようだ。
 この日は砂利、芝、笹、赤御影、天然スレート、アスファルトと言う足の感触の違いを楽しんだ。(本当はいけないのか、芝・笹に入るべからずは無かった。)歩いて欲しい所、欲しくない所、楽しんで欲しい所と、質感で意味させているような気がする。内部ではぴかぴかの「ヒタヒタ」とした密実な感触の木の床、大理石、etc。
 車寄せの方の小さい池も、機械室上部の大きな池も、幅広の縁石が赤御影になっていて、建築と異和のある、こんなに幅の広いしかも自然な凹凸を持った赤い石なのか本当に良く解らなかった。少しだけ解ったのは、この赤御影はアプローチの車寄せ床に使われているように、池の周りに使われた時にもその上を歩いて欲しいと言う意味合いを持ったせて使われているらしい。その建築の繊細さに不釣り合いな大きな幅は、上を歩く時に歩き易いよう安定感と、椅子のような使いやすい高さにしているから高いのだと言うこと。これらのことは体験することで実感し、そこに意味があり、その意味を材質の違いに表出しようとしていると言いうことらしい。(実際幼児でさえ歩いていた。散歩の人はみんな池縁の幅広赤御影石の上を歩いている。)
 正面アプローチという決めのアングルから眺めていても、赤い石、深緑の石、黒い石、アスファルトの黒、円錐に刈り込まれた木、赤錆びた鉄板の大きなオブジェ、大きな機械室の壁に斜めのスロープ、コンクリート打放しの壁、これらがどう見てもちぐはぐなのだ。谷口らしい端正な建築と言うレッテルを裏切る。池の水中噴水の音が抽象的宇宙的で現代美術のオブジェとマッチしているように思えた。そう思えば現代美術の抽象的宇宙的ちぐはぐさと思える。(噴水の音が静かだから機械室の音が少し気になる。)


   2.細切れな運営
 この美術館は一棟に見えているが、常設展示と、企画展示と個人展示とに別れている。
この事は入って見るとその場その場で共通券の提示を求められるし、何回でも入場できることで解る。各展示場が別れていることは切符なしで建物内部を通り抜け出きるとか、外部に用意された美術館の付属のテラスとか通路も通り抜けでき、付属の庭と一体に入場料なしで利用できることを意味している。今回もテラスとか内部通路にたむろする高校生とか、閉館してからだがテラスでローラースケートに興じる子供達とかに出会えた。夜間はアベックのデイトスポット的なオープンな運営になっているのだが、6月にも拘らず地域がらかアベックは少なかった。







   3.展示空間の内部への求心性に対し、外部に向かう遠心性に景色の物語を仕込む
 自然光の柔らかなで均質なトップライト、自然光の柔らかで均質な光壁。展示場や案内ホールは開口の無いこれらの抽象的な光に溢れていて、テッキリ人工照明かと思ってしまう。ここにはコルビジェ以来の美術館の自然光への挑戦がある。

 この美術館は景色を見ると言うことをやっていて、立地状、街を眺めると言うのは解り易いテーマです。
展示を一通り見終って、レストランに座ってコヒーを飲みながら外の景色を眺めていると、 例のキャノピーのフレイム一つ一つが絵画の額縁のように見えてくる。そしてこの奥行きの深いフレームは、谷口お得意の遠心する壁になっているんだと思える。するとそこに見えている景色は木々に見え隠れする茶室、民家、櫓であり、それぞれに対応した、柳、00、赤松であり、それらの下辺で共通に括っているのが田んぼの稲のように見せるカキツバタの群落であった。(花は落ちた後だった。)ここには農業で生産を支えた時代の懐かしい物語の風景がフレームアップされ、夕日にシルエットを作って、ここに建築の主題は建物から眺めるランドスケープへと手渡されていると思える。(この豊田の丘に夕焼けに生えるランドスケープの写真を建築雑誌に見かけない。)谷口は建物だけを作っているとみなされてしまっているが、けっしてそんなことは無い。これらのことは情報化時代のバーチャル産業が、みんなの主要な感心となる時代にあって、逆に建築が「実」体験の中で捕らえられる特性に生きることを関知し、これに感応し始めた建築家やランドスケープデザイナーを、私達は見い出していることになるはずだ。

 どの風除室も2100位の低い天井高に押さえられていて、ハッとする。食堂の開口も2100の低さだ。これらの「低い」と言う秩序は茶室から来ているようにも思える。茶室の軒高さは2100。(断面図から読み取り)
 また茶室は風景となって食堂からのビューに意味を与える(前述)。両者が以外に関係していないようで全体の構想の中では緊密に役割を与えられている。



 常設展示場への外部からのアプローチは、玄関アプローチからのアルミハニカムのキャノピーが連続していて、「連続した高さ」と言うことに囚われてしまって、キャノピーは高いと思ってしまっている意識からなかなか抜けられず、騙されたままになる。実は一層分低くなっているのに。ここにある風除室や食堂開口の低過ぎる高さを基準にしてしまうからでもある。ことに現場ではこの両方の高さを一遍には眺められる場所がとれないように植栽が作り込まれていると思う。あの懐かしい風景の3つの建物もちらっと見えるだけにとどめられ、様式のちぐはぐさが目立たないように植栽によって作り込まれている。これらのことはじっくり眺めてやっときずいてくると言う風に、騙し絵のように設定されていると思う。この事は写真では解らない、体験の中で明かされる高さのイリュージョンの面白さを作っていると思う。帰り際になって池の幅広の赤御影石の縁石から建物を眺める時、キャノピー下を通る人の大きさが教えてくれる。人と建物を同時に見ることで、人の高さが基準となって、ここにやられている高さのイリュージョンをはっきり関知できるようになっている。この種明かしの場が、あの建物とは異和のある赤い御影の池縁石にセッテイングされているのだ。

 葛西臨海公園展望広場に続いて、人と建築を一体に眺めることで、明かされるテーマを持つということが繰り返されている。
 勿論これらだけではないはずだ。谷口の建築は鑑賞の質を変えていかないと明かされ無い。

                  了        97・06



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これは2回目98年6月に行った時の写真です。

玄関前庭360°分解写真。












現在の段階で写真を眺めていると、深い緑の石と、展示室の白い塊とが整然と面構成されているから、アプローチの赤み影の自然石は、雨に打たれていることもあるのだろうが、とてもしっくり馴染んでいるように見える。中庭の囲みを矩形にして単純さと複雑さを構成しているように感じます。
 エントランス360°動くパノラマ写真へ 




食堂から中庭を見ています。中庭は食堂の床とフラットに連続しています。この時は雨が降っていて、床石がぬれて池の水面のようで、池に連続しているかのようですね。
また庇状のものが雨よけになっていて、その下を歩いている人が見えますね。個人美術館へのアプローチですが、絵画の額縁のように樹景を切り取っています。

中庭360°分解写真









この焦点になっているところに豊田の街が見えます。左手の建物が個人美術館、右手が食堂です。。
 中庭360°動くパノラマ写真へ 

                              2003・01・13
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