パノラマ360°
これらをもう一度再体験しながら、あの光壁が何なのかをまとめてみます。
体育館では南の採光をどう処理するかが設計者の考えどころです。
正式競技だったら南採光は全てカットして、廻りも暗幕にして、まぶしい昼光は完全カットして、人口光でやるところです。しかしそれではあまりに味気ないし、折角の昼光のが活力が生かせません。ですから、普段の時にはどこかに妥協点を見いだして、南の昼光を入れたいと、設計者は考えているものです。一つの結論がここにありました。
南にドライエリアのようなものを取って、そのトップライトの昼光を壁面に反射させて内部に間接光を導くという。光を拡散させるスペース(かたまり)を作って、拡散させた昼光を内部に入れていこうというものなのです。これはなかなか贅沢な設定です。現実にはやりきれない優れたものだと思うのです。南側を窓ではなく壁面としてしまう訳で、しかもスペース(面積)を地下でもないのにドライエリア(カラ堀)のように使ってしまうのですから贅沢です。そして特に壁になってしまうので閉塞感に囚われてしまいがちで、ルーバー状の光の壁という可能性を見いだしたやり方は大変な判断だと思うのでした。
ちょっと残念なのは壁面の量が下層のアスレチック階によって減らされてしまったため、インパクトが減じられているところですか。
常々思っているのですが、物の在り方で、何かを幻想させてくれるのが建築の先端の表現なのだと思っています。この「けんちく探訪」でもそこをポイントとして取り上げています。今回はFRPグレーチングの連続から、その向こうに窓面に下地の写らない究極の繊細さをもつルーバーが仕込まれているのではないか?という幻想を感じさせてくれました。キャンパス全体が工業的な無機質な主題を持っていますから、柔らかな光を感じさせる一角があったのはホッとしましたし、上手いと思いました。
キャンパスに配置された芝生の扱いも、これと同じホッとする場所になっていますね。
050630
追伸
体育館南面の写真忘れたなー。
このほか、食堂、図書館、学生のたまり場、講堂があります。講堂は演題が外部通路に面して同じ高さになっており、演台がガラスの大開口によって丸見えになる特異な空間構成となる傑作でした。
参考hp