茅野市民館見てきました。
           
              ■設計 古谷 誠章  2005.11
           photo by mirutake 2006.5


茅野駅は小さな駅です。高架にした駅通路から茅野市民館の図書館に直接アプローチできる構成になっているのです。







駅舎に直接接続した図書館と言うのもきっと初めてなのだ。これは駅を使う人にとってはこの上なく便利なはずだ。そして茅野駅の小さい規模であることが、この駅に直接つながる図書館が落ち着いたものになっていると思う。


この建物の新しい特質として、トイレの扱い。
今まではトイレは壁に囲まれたものとなることが常識だった。ここでは、ガラスの箱に囲まれた部分が廊下でありトイレの動線部分になっている。そしてトイレのブースに当たる部分だけが壁に囲われて作られた。ガラス建築ならではの開放感のあるトイレとなり得た。発想の転換が成功したと思う。
このスタイルのトイレは小規模な図書館部分だけではなく、780席のマルチホールにもこの方法が使われていた。公演中のトイレでの幻滅感が救われそうな感じがする。


この図書館の通路に立てば駅舎が間近に見える。田舎の駅舎だから、すっきり単純なホームが眼下に、間近に見えるのだ。この感じはなんなのだろう。この空間感覚は上空から見ているような、建物の配置が体に入ってくるのと同じような感覚だ。外にいて近くで見ている感覚があると言うことか。






そうこの建築ではコの字型がガラスの箱によって作られているから、単に囲まれた中庭ではなく、囲まれると共に、図書館が透けて駅側に解放されており、そこに地元の山並みが見えると言うことを可能としてしまった。





気づいたが、図書館のスロープになっている床の下が見えていると言うことが何を言っているのか?きっとこれは建物の「軽快さ」なのだと思う。それは使う人にとっては「気軽さ」と言うことなのではないでしょうか?










実は現場でも建物の反対側が見えると言うことが、ちょっと解りづらいと言うことではあった。









単純なガラスの箱だから、こちらから建物の反対側の景色が見えるというーー建築の実現。
このことが建築雑誌や、自分の写真でも大変に解りづらく、現実の体験でもこの言葉のようには明確には感じてこない。これは言葉に置き換えて初めて体験の現実化が起こることを意味しているように思うのだがどうでしょうか。この何か感じているのにそれが何か、自問している自分がいました。茅野市民会館ホールに立って、感じていたことでした。そしてこの中庭で、囲まれながら、抜ける感じもあるガラスの感覚が何を意味しているのかを書き出さなくては。


単純なガラスの箱なるが故に、建物の反対側が見えるというのは、世界で初めての実現ではないだろうか?建築の設計者はみんなこれをやりたくてしようがなかった筈だ。
しかしワンスパンにして薄い建物にすること、建物の上から下まで全て透明ガラスとしうるか?と言うことが、難関だったはずだ。それは薄い建物でも成立する用途とは何かであり、相変わらず室内空調としてそれは成り立つか?と言うことだった。
そして現代ガラス建築の理想が実現してしまった建物がここにある。


ここ茅野も盆地なので(私が育った上田も)、この図書館のガラスの建物の向こうには地元の山並みを見ることができる。地元の人には当たり前でも、この建物のガラス越しの山並みは現実離れして感じられた。本当にこれは現実の景色なのか?と。私が思っていたのは、駅前開発は地域の自然景観をつぶしてしまうはずだと思いこんでいたから。

この建築は複合施設である。そこで通路系を共通にして接続することによって、コの字型に囲まれた快適な中庭を実現することができる。ここまでは今までの在り方なのだ。

そうこの建築ではコの字型がガラスの箱によって作られているから、単に囲まれた中庭ではなく、囲まれると共に、図書館が透けて駅側に解放されており、そこに地元の山並みが見えると言うことを可能としてしまった。


このことは何を意味するのか。
田舎では駅舎関係の建物が造られることによって、囲まれた駅空間や、駅ロータリー空間が地元の山並みを隠して空間が窒息し始める、普通の建築では。けれどもガラスの建築は、建物が建つ前の、この田舎の駅舎の開放感そのまま再現するかのように、ガラス越しではあるが、地元の山並みを見せた開放感をここに保存してくれた。この貴重な、そして現代建築でしかできない、新たな情景を創ったと言うことか。これらのことが実現している。(やった!やっと書き出せた。)



建築雑誌で見たときには見るのが気が進まない感じだった。白と黒のストライプが、趣味が悪い気がして、このことばかりが気になって、山並みが透けていることにも気づかなかった。でも現場では高級な感じで地元の人にはよい感じに受け止められているようだった。でもよそよそしい。現実離れな色だと思う。透けることがリアルを感じさせる材料があったのではないかと、新しい建築に感激した今も思ってしまう。

             060528      mirutake




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