昆虫の羽根に当たる部分は、ステンレス板と不透明処理ガラスだ。
入り口庇のところでは、植物のつるのように曲げこまれたステンレスパイプがもっとも立て込んでいる。

昆虫の無数の触手がガラスを支えているかのようだ。
R加工された鉄骨がナスカの地上絵のようだ。
 右側に鏡のように磨きこまれた矩形の板がある。
左側にコントロール室のような窓があり、その下部の球加工の底板がすごい。この「スーツ」の全ての部品が光り輝いている。


 青山製図専門学校 から 大江戸線飯田橋駅換気塔

      「隠す」張りぼて から「透ける」装飾













 青山製図専門学校(1990年)=ガンダムとは「張りぼて」建築ではある。
けれど実際そこに立って見て見ると、どのような材料で作っているのかよくは解らないが、年月が立っているのにも関らずしっかりと原色の光沢を保っている。思っていたよりずっとずっとしっかりとしたボリュームを持って、存在感を持っていた。
 けれどその形態はあくまで建物に付け足された空想の造形ものであり、建築材料で構成される合理的なシェルターの在り方から懸け離れた、主情的趣味性のイメージが付け加えられている。これにより従来の概念の建築から決定的に離れたと言えるだろう。言いやそれは離れ過ぎてデズニーランドの建物のように、絵本の中の建物、空想の建物であり、大変によく作られた張りぼて建築にしかなっていないと思う。













 では今度の大江戸線飯田橋駅(2001)はどうだろうか。
ここにも空想の主情的なイメージが付け加えられている。ところがここでの付加は「張りぼて」になっていない。何でだろうか?

 付け加えられているものが建物本体を隠していなからではないだろうか。
張りぼて建築とはなんだろうか。はたまた建築の在り方と言うのはどのようなものなのか。



 事態を捕らえられるために、ちょっと準備をしよう。
ここでは建物を捕らえるときに見えてくる、二つの極の作る軸として、建築を捕らえて見たい。
その一つの極に「東京ディズニーランド」(1983)をおき、もうひとつの極に「せんだいメデアテーク」(2001)を置いてみたいのだ。

 この二つを見ていて思うのは「東京ディズニーランド」が徹底して表層の形と表層の模様が童話の絵の世界に表わされた程度の真実味で良いと思われており、結果として四角形の建物であることを隠すように、表層の童話の絵の世界が張り付けられているという風にある。
 これに対し、「せんだいメディアテーク」の方は余計な物を付け加えないようにしている。そして隠すことを極限まで避けて、できうる限り全てが見えるようにしている。外装のオープンなガラスカーテンウォールがそうだし、信じられないことに柱の中が見えて=階段であったり、エレベーターであったり、空調のダクトであったり、柱が「人体の骨格だけにされてしまった」かのように、格子状のパイプになることによってこれを可能にしている。

 ここで言ってしまいたくなるのは、「せんだいメディアテーク」の極は建築の構成する「物」そのものを絞ることと、使われた「物」は極力裸でそのまま見えており、張りぼてになるが「物」が避けられているということだと思う。それは建物を構成する全ての「物」が、見えたままが全体を構成する位置として生きられていること、これを目指しているように思う。
 これに対し「東京ディズニーランド」のほうは、見せる「物」は極力表面材として使われ、その表層の「物」の模様に集中される。それは「物」を表面を覆うものとして使い、建築の構造材も構成材料達も隠されていることを特徴とし、ブラックボックスになっている。
 



 このような視点を持って青山製図専門学校=ガンダムからきたはずの、大江戸線飯田橋駅換気塔を眺めて見ると、全て見せることを始めた張りぼて「建築」と言えるかもしれない。その仕掛けられている覆いは、隠す覆いであることを止めて、昆虫の羽根のような透明な物に変身し、骨の構成であることによって「全てを見せる」建築に向かってきたという風に言えるのではないだろうか。それは羽根のように見える装飾が、空想の物体ではなく、建築を構成するデティールの部材を=見せ場としているではないか。この事は写真によっても良く解る。その圧倒的密度を御覧あれ。


                        了    011223



 
































渡辺誠 HP http://www.makoto-architect.com/index-j.htm
       http://www.architecture-tokyo.com/3rdPages/ArchitectWTB.html











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