従来の建築ですと、柱と柱の間をできるだけ離すことで、大きな空間、開放的な空間を作ってきました。すると(1)柱も(2)梁も大変に大きなものになり目立ってしまうものです。力強いと言う観点から好まれてきたとも言えます。すると(3)床も基段のように地べたから持ち上げたくなるでしょう。
 この建物はちょうど反対になっています。
(1)柱と柱の間隔を1.4mから2.8mと大変に狭くとっています。ですから超細い柱になります。6cmだと言いますから信じられないです。サッシュと柱が同じ太さですものね。そのため柱の本数が大変い多いことになっています。けれど中を歩いても柱が邪魔になることはありませんでした。不思議と言えば不思議です。柱がいっぱいありますからジャングルジムのようでもあります。歩いて気になるということはありませんでした。




 写真をよく見ると外部になっているところに、鏡のような板が柱の間に入っているのが見えるでしょうか。これが建物が横に振られたとき(地震とか風とか)耐えるように入れられています。この鏡と柱の間を歩いていると、鏡の迷路をもイメージさせます。(照明器具がのっている白いボックスがありますが、これはなんなのか良く解りません。お解りの方教えてください。)
 (2)梁にあたる部分=屋根も大変に薄いわけです。実は梁を省略できる高度な最先端の構造の考え方でできています。ですが、施工としてはそれ程高度でなく作れるものだと思います。
 (3)床も地べたと同じ高さになって、厚みを全く見せていません。この建築の軽快さ『浮遊する』イメージは、特にこの床の扱いが重要な役割を演じていると思います。芝生のほうが高いくらいですから、うすっぺらい板に見えますね。



 この建築は『体験で解る』と言うこのホームページの主旨から言うと反対で、写真で最もよくわかる建築です。そしてその作り方も、従来の箱のような縦横の単純な線だけで作られていますが、実はこういう単純さで現在に通用する美しい建築はもうできないだろうと思っていたのに、部材を極限的に細くして行くことで、まだ可能なんだと言うことを示してくれたものですから、ぜひ取り上げたいと思いました。



 ところで実際の体験からだけですと、なかなかここまで発見できないのです。
建築を実体験している時にいろんなことを発見していくというのは、実はなかなか難しいことです。なぜなら現実では外部にいる開放感があって、なかなか建築鑑賞する内面的な意識へと集中できないと思うから。初めての場所で、足元は悪いですし、何やっているんだと言う人の目も気になります。なかなか建築鑑賞に集中するのは大変です。
 その点写真は雑物雑音を一切排除して、鑑賞する建築だけを正確に切りとってこれますから、落ち付いた自分の部屋でじっくり手にとって眺められますから、発見も多いのです。
 それにこれらの写真は超広角20ミリで撮られていまして、人の視覚よりかなり広い範囲を一気に眺められますから、建築の全体の在り方が容易に捕らえられるのだと思います。


(実験として人間の視覚に近い35ミリレンズで撮った場合、下の写真のように二枚を合成することになります。全体像がうまく得られるでしょうか。青空や芝生の広さも建築全体のイメージを作るのに役立っていることがよくわかると思う。)



 また写真の色というのは現実の色ではなく、写真の色素であり、実際の色より原色に向かって発色するように作られていますから、この青い空のように、単純明快な訴え方をしてくると思うのです。






 またこの施設は残念なことに、この建築の美しさが引き立つようには、使われていませんでした。
 こういうことが建築の鑑賞に大変に障害になります。この建物も多くの人に何もきづかれないで、通り過ぎてしまのかもしれません。
 美しい建築を実際に実現して行くと言うのはどういうことなのだろうかと、いろいろ考えさせられます。




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